ドイツで鍛える生活 8巻

ここまでのいきさつを読んでいない方は前書きから順にどうぞ。

 

1. リューベック脱出計画

リューベックに来て10ヶ月。

孤独論も語り(参照:鍛える生活 7巻)、

だんだん頭がおかしくなっている今日このごろ。

 

私は現地企業に採用されているので。

自分で辞めるか。クビにならない限り、

一生、ここ。リューベック。

(初年度は1年の契約だが、その後は無期限契約になる)

もちろん、一生いるつもりはない。

しかし。40歳や50歳になってから日本に戻ったのでは。

仕事もないだろうし、人生立て直せるのか…?

大体、最初から離れるつもりで暮らすくらいならば。

さっさと離れ、

新天地で早く生活を建て直したほうがいいのでは?

そうだよ。ちょっと道間違えちゃったと思うなら。

戻ればいいじゃん!

よし。リューベック脱出だっ!

 

というわけで。

来る前は2年居ようかと思っていたが。

もう挫折。脱出計画。

そんなわけで。ずーっと、英語版、日本語版と。

履歴書を書いては改訂している。

昨日は10時間、今日も10時間。

それでもまだ一件も出来上がらないという有様。

あまりのストレスに途中、iTuneを起動し。

ワンクリックでアルバムを一枚買ってしまったりと。

迷走しつつ、履歴書と奮闘している。

 

さて。職探しをしていると。

いろいろと目に入る。

東京を目指しているのだが。

勤務地。北京とか。グラスゴーとか出て来たり。

ねえ。ロンドンに来ない? と言う人もいたりで。

その度に。北京かあ。東京に近いぞとか。

ウーム。ロンドンねえ。悪くないかもと思う。

なんかこう。

言われる度に心が一瞬ブレるのです。

 

もうなんといいますか。

あまりにも失うものがなさすぎて。

あまりにも制約がなさすぎて。

あまりにも自由すぎて。

世界のどこに住んでもいいわけです。

 

つまり。超自由なのだ。

しかし

 

自由とはそれだけ希望があり。

それだけ夢もあるが。

自由とはそれだけ孤独でもあり。

それだけ哀しいということなのだ。

 

自由とは。

希望でもあり哀しみでもある

 

自由を得るということは。

孤独と哀しみをも抱え込むことで。

孤独と哀しみから脱却するということは。

自由を捨てるということなのだ。

 

両方はないのだよ。この世には。

 

さて。私の就職活動。

目指せ東京!というわけなのだが。

20時間かけてもまだ履歴書が一件も出来上がらず

そういや。今の会社に応募した時は。

『履歴書送って』と言われてから。

ウッ。それが。今。旅行中で帰ったら送る。

とかなんとかウソついて。実は。

『ゲっ。英語の履歴書ってどうやって書くんだー?』と。

ずっーと家に籠って書き続け。

完成したのは一週間後であった

 

はあ。

何をやらせてもこんなスローな人間に。

果たして。東京の会社は反応するのだろうか。

そして。

わたくしは東京に帰還できるのでしょうか。

乞うご期待!

 

2. 迷走のススメ

「みんな大変な時期だったし忙しかったと思う。

おかげで◯◯と◯◯がリリースされました。Good job guys!

と。課の会議で言われて始めて知った。

えーっ。みんな忙しかったのぉ~?

私、結構。暇だったんですけど

ウーム。

辞めるの言いにくいなあって思っていたけれど。

実は。辞めてもなーんも問題ないかもしれん

 

さて。私のリューベック脱出計画。

目指せ日本!というわけで。

無事。履歴書も書き終わり2件ほど応募した。

 

しかーし。私。

履歴書に載らない履歴というのは沢山あるのだが。

(参照: 履歴書に載らない履歴vol.1-4 

企業に見せられる職歴というのはほとんどなく。

見せられるのは直近の5年間のみ。

ま。5年の経験なんて大したことないので。

それを捨ててもよいわけで

つまり。何してもよいわけです。

そう。またもや超自由なのだ。

 

つまり。

すがれる経歴らしきものがない分。

前途は真っ暗と同時に。

前途は無限に広がっているとも言える。

しかし。無限すぎるがために。

減った靴底を見るだけで。

『あっ。靴を修理する人になろうかなー』

とかなんとか思い始めたり。

もー。なんと言いますか。

迷走も甚だしいのです。

 

で。人生。迷走している時というのは。

ヘンテコリンな物事が寄ってくるもので

2週間ほど前。休暇でフランスに行ったのだが。

パリのデパートで。

カンヌの海辺の豪邸にお住まいの。

アルジェリア人女性とお知り合いになった。

とは言え、5分間立ち話しただけなのだが 

先日。メールが来て

 

ねえ。来月。会えないかしら?

今。カンヌは国際テレビ番組見本市をやっているの。

うちはねぇーっ! 毎晩パーティーなのよーっ!

パーティーよーっ!  PARTY!! と言う。

仕事も紹介するわよ〜〜〜っ!

と。メールでものすごく誘ってくる。

(会えない?ってさあ…。私は北ドイツ。あなたは南フランス…)

 

うーむ。そのパーティーとやらは。

レス・ザン・ゼロ(1)のような世界じゃないだろうなぁ。

(注1:  80年代のアメリカ映画。ロスの上流階級の若者がコカインとパーティーに明け暮れ、ドラッグに溺れていく様を描いたもの)

 

しかし。なぜ。君はそんなに私に会いたいのだ。

なぜ。カンヌで私と時を過ごしたいのだ。 

えっ。まさかっ。ウーム

 

そう。これこそが。

自分が迷走している証なのだ。

ヘンな事が起きるのです。

 

そういや。昔。

ドイツで時給5ユーロで皿洗いしたりして。

やはり迷走していたとき。

日本人の物件探しのバイトに応募したら。

なんとその日本人。

ロシアに出入り自由な元武器商人!

戦地に武器を売るジャパニーズマフィア! 

ヒョッ。ヒェ~ッ!

なーんてこともあった。

出で立ちも。誰もが振り返るマフィア風。

結局。数日でビビって辞めたが。

あれも『迷走』が呼んだドラマであった。

 

人生は迷走すればするほど。

数奇な事が起きる。

人生が退屈だという人は迷走すればよい。

しかし。

迷走しつづけることはキツイのだ。

 

さあ。ここからのゲームは。

もう自分の第6感に従うしかない。

 

私の第6感よ。

私を正しい道に導いてくれ。

カンヌは。

セックス&ドラッグ&ロックンロールですかー?

きゃ~っ!

ああ。私のサイコロよ。

あまりへんなところに立ち寄らせないでくれ。

そして。3ヶ月後。

私はどこにいるんですかぁ~?

 

ボードゲームの上でない。

本当の人生ゲームは続く

 

3. 常識的就職活動と自己満足

**** 常識的就職活動と自己満足 ****

 

MC: えーっと。これは。

肉とじゃがいもしか受け付けない同僚との。

チームランチ(*注2)の苦悩を唄った替え歌です。

(注2: 毎週月曜日は1人がチーム5人分のランチを作る。皆、肉とジャガイモが好き、生野菜が苦手という典型的寒冷地の舌の持ち主)

 

ああ。料理することは。

難しいことじゃない。

ただ、食べたいものをー

つくればいいのさー

(中略)

だけど君たちはーっ、いつだぁーって

肉とじゃがいもしかーっ、

食わないーぃーよー

サビ:

今日だっーて君たぁーちーを想ーいながら

わたーしは、作るよ。

だけど言えなかぁーったことーばがある。

短いから聞いておくれーよ

(ここで演奏を止める)

台詞: ああ。チームランチが

嫌いだあーったー。

(ジャーンジャカジャカジャカと演奏入る)

 

あれ。履歴書を書くつもりでPCに向かったが。

替え歌が1本できちゃった

そう。私は、これ以上就職活動できないのだ。

2件応募した。私はこれ以上もう書けない。

 

一般的に就職活動とは。

20件とか応募するようであるが。

私ははあの意味がわからんのだ。

その中の本命はほんの12件であろう。

それなのに20件出すということは。

自分の念と想いを20分の1にして応募するということなのだ。

本人は20件出した達成感もあり満足だろうが。  

実は。安全を狙っているようで。

非常に危険なことをしていると思う。

 

私は。もしこれ以上履歴書を書いても。

あの2件と同じくらいの情熱を持って応募できない。

だから。出さない。

私が採用する人だったら。

20件応募するような人を取らない。

だから。出さない。

 

                     *  *  *  

ボスからメールが来た(今働いているところのボスね)。

タイトル: Contract: 1 year interview(契約;この1年に関する面接)

あーっ。 そうそう。

初年度の契約は1年なのだ。契約の更新のインタビューだ。

 

あ。見えた! ドイツ撤退への一歩が

ボスとの面接は今週。

契約更新する気はないのだが何て言ってやめようか

『日本に住みたいから辞める』とか?

しかし

 

この街を気に入って住んでいる人に。

この街が嫌だから出たいとは言えない。

ドイツ人に。

日本の方がいいから日本に住みたいとは言えない。

そんな私個人の主観なんて彼らは一生知らなくていい事なのだ。

何事も『全てを言う』という行為には愛がない。

それは。自分がすっきりするという。

単なる自己満足である。

人間。全ての事実を暴露する必要も知る必要もないのだ。

あー。明日。なんて言おうかなあ

 

よし。ともかく。

何かが刻一刻と動きはじめた。

よーし。一個一個乗り越えれば。

日の出ずる国。ジャポーン。があるはずだ。

あれっ!?  しかーし

その『日の出ずる国』に私のものなんかあったっけ?

もう自分の家もないし。職もないし

まあよい。行けー!日の出ずる国へ!

ニッポン!

 

8巻あとがき:

行けー。ニッポンヘ!なーんて言ってますが、まあそうは問屋が卸さなかったわけです…。それはまた次回。

 

続き→ ドイツで鍛える生活9巻