ドイツで鍛える生活 12巻

ここまでのいきさつを読んでいない方は前書きから順にどうぞ。

1. 不便な生活をフツーにする方法

ドイツのあり得ない不便な生活で、私の生活もトンチンカンなわけだが。

(ドイツで鍛える生活11巻

ドイツ人達は普通に暮らしているように見受けられる。

それはなぜか…。

 

               * * *

冷蔵庫を壊したのが先週。

(参照: 11巻: 3.フツーの暮らし

食料はすべて窓の外に避難させたが。

なんせ寒すぎて凍る。

よって。卵は破裂のするかもしれないので部屋の中。

 

しかし。

ドイツの卵は糞がついてたり、

鳥の羽がついていたりして。

まあ、わりと生々しい。

そして。部屋の中は暖かい。

無精卵だとは思うが

もし雄鶏が乱入して犯されていたりしたら

もーっ!産まれちゃうーっ!

と。数日、やきもきしていたのだが

 

ハウスマイスター(家の管理&ケアする人)が。

冷蔵庫を見に来てくれた。

で。

『コワレタ。チベタクナリマセン』とだけ。

オウムのように言っていたら(単に私がドイツ語ヘタ)。

本当は自分で壊したのだが、自然に壊れた事となり。

なんか新しい冷蔵庫手配してくれ。

1週間以内にすべて解決。

もー。感激。

 

なんでこれくらいで感激するのかというと。

基本的にドイツの生活は日本より不便である。

サービス業が発達していない。

(重要視されていないとも言う)

よって。何かを手配する。

というのがわりと難関だったりする。

(参照: 1巻:5.優雅と不便の関係性 

 

そんな中。ドイツ人は。

どう暮らしているかというと。

基本的に自分たちでできる事は自分たちでやる。

(参照:

デカイものを買ったら、

自分たちで車の屋根にのせ運び。

引越ししたら。

キッチンを取り付けたり、壁を塗ったり。

まあ。なんでもやるわけです。

 

で。ここで重要になってくるのが。

周りの人々の協力。となる。

ま。私は単身ドイツに乗り込み。

周りに人がいなかったために。

『鍛える生活』になってしまったわけですが

 

そういや。先日。

ルーマニア人ボスが。

クリスマスイブに休暇でルーマニアに帰る。

という話をしていたのだが

1224日はもう世の中が動いておらず。

(ヨーロッパのクリスマスは日本で言うお正月と同等)

空港から街に行く長距離バスの運ちゃんも休むので。

交通手段がないとのこと。

で。彼の故郷は空港から400 km

 

「えーっ。どうやって帰るの?

「まあ。当日、友達に電話すれば誰かしら車で来てくれるでしょ」

「えーっ。400kmの距離を?」

(東京、大阪間を『今から迎えにきてー』とか言うわけ?)

「友達なら400kmくらいがなんだ?

(えーっ!往復800 km…

「オレだって600km の道のりを迎えに行った事がある」

 

はーっ! やっぱり。

社会が不便であれば不便であるほど。

頼み事もデカイ!

ま。ドイツはここまでの事はないけれど。

でも。基本的な解決策は皆同じなのである。

周りに頼む。

で。世の中が不便な分。

皆。日常的に頼み慣れている。

ってか、1224日がそんな状況なら。

その日を避ければいいのに

というのは日本人的発想なのか。

前もって誰かにお願いしておくとか

あー。でも。

別の楽しそうなイベントが後から入ってしまうと。

わりとそっちに平気で行っちゃうのね。皆さん。

よって。前もって約束する意味もない。

(この性質は欧米系共通か、欧米の一部の国に多いのかは不明)

 

そういや。日々の協力事では。

うちの会社でも思い当たる節がある。

オフィスは駅から3.5km

バスは1時間に3本しかない。

車で出勤する、とある同僚は。

毎朝。電車で来る同僚を。

駅で拾ってから会社に来たりする。

で。その車のない人、帰りはどうするかというと。

同じ時間に終わりそうな人を捕まえ。

また、『送って~』と言うわけである。

 

ウーム。毎日、帰る手段をアレンジ。

これ。私だったら。

毎回。誰かに頼むのがかなり苦痛だ。

20分に1本のバスに合わせて帰る方が気楽だ。

 

結局。

不便な生活をフツーな生活にするカギは。

周りの人々を使うこと。

 

これねー。

かなり性格的な変更も要求されます。

30代も半ばから、性格変更か。キビシイ

 

ま。とりあえず。

冷蔵庫が来てよかったー。

卵も外で破裂しないですむし。

(って、なんか冷蔵庫の用途が日本と違う気が)。

ヒヨコも産まれないで済むし。

だから。無精卵だってばーっ!

でも。ヤラれてたらねぇ?

 

photo: 自然冷蔵庫からフツーの冷蔵庫へ

 

一番右が冷蔵庫
一番右が冷蔵庫

 

 

2. ニッポン

待ちに待った2週間半の長期休暇。

年末年始を日本で過ごそうと。

この休暇のために。

25日間の有給を半分残しておいた。

(1年間に25日の有休をもらえる)

さあ。日本へ向け、いざ出発!

 

しかーし。

ゲルマン不信病にかかっているので。

頼れるのは自分だけ。

よって。いつものごとく心配事の嵐。

その上。ここ数日。

異常な雪で交通は混乱状態であった。

リューベック中央駅まではタクシー。

そこからハンブルグ空港までバスか電車なのだが

 

タクシーは来てくれるのだろうか。

バスは定刻通りに来るのだろうか。

電車の方がいいのか。

でも。電車。この前、2時間止まったのよね

ウーム。と。うなだれているうちに。

タクシーは来た。

 

今回。事情により重いスーツケース、2個。

そして。うちはエレベータなしの5階。

まず。スーツケース1個をエッコラ1階まで降ろし、

タクシーのトランクの中へ。

そして。もう一個を取りに5階へ駆け上がるのだが

ここで。ビョーキが始まる

 

このタクシーのおっちゃん。

私のスーツケースをトランクに入れたまま。

走り去るのではなかろうか

という妄想に駆られ、

階段の踊り場に到達する度。

踊り場の窓から、

カッ。と顔を出しては。

キーッ。と睨み。

見てるわよ~。盗むんじゃないわよ~。

と無言の圧力をかける。

そんな奇行を繰り返すこと数回、5階に到着。

もう、ほとんど精神異常者。

 

そして。

無事、もう一個のスーツケースも下に降ろし。

タクシーに乗り込んだのはよいが。

乗り馴れていないもんで。

マヌケにも助手席に座ってしまった

よって。中東系のタクシーの運ちゃんは。

親しみを覚えたらしく。

横からガンガン話しかけて来る。

「へえ。休暇で日本に行くんだー」

そして。またビョーキ再発。

しまったー。空き巣に入られるーっ!

 

ま。そんなこんなで。

結局。色々な乗り物を乗り継ぎニッポン到着。

 

12月末のニッポン。

そ、空が青ーい!

ひ、日差しがっ!

た、太陽が眩しい!

 

スコーンと抜けた青空の下。

行き交う、たくさんの人々。

久々に見る東京はなんだか、とっても眩しく。

ただ。空が青いだけで。

エネルギーに満ちあふれているように見えた。

 

気持ち的フィルターがかかり、こんなかんじにみえた
気持ち的フィルターがかかり、こんなかんじにみえた

ウォーっ。と。

手を広げて天を仰ぎたかった。

 

映画『ショーシャンクの空に』の主人公が、

刑務所からの脱出に成功し

両手を広げ、天を仰ぐあのシーン。

 

私は。そんな気分であった。

ウォーっ!トーーキョーっ!

 

そして。実家。

ああ。シャワーが温かい。

しかも。42度とか45度とか1度刻みで設定できるぞー。

そして機械がしゃべる。

『お風呂が沸きました』

なんだ。ここはブレードランナーか(古い)。

まあ。そんな事は言わんでよろしい。機械よ。

 

シャーッ!

サランラップがすごいっ。切れる!

ハサミでラップを切っていた私は。

一体なんだったのか

 

綿棒で耳をイジイジ。

おー。綿棒が折れん。使いやすいっ。

ドイツのは枝が折れるは先がボワボワになるわ。

そういや。昔。ドイツ人の友達が日本に来た時。

綿棒を自分の土産に買ってたっけ。

今。その意味がわかる

持って帰りたいなー。綿棒。

 

そんな感動もつかの間。

翌日からすっかり東京の人となり。

毎日。お茶、ランチ、お茶と。

朝から晩まで。

人を変え場所を変え、喋りっぱなし。

そう。この『トーク』という、

エンターテイメントを奪われてたのだ。私は。

そして。いつしか。

そんな非日常が日常となり。

リューベックにいたことが遠い昔になってしまった。

 

しかーし。

2週間は自動的に経ち、

ドイツに自分の生活があるという実感がないまま。

成田を飛び立つことに

 

リューベック到着。

すると。不思議なもんで。

ここはここで。

『戻って参りましたー』という感じになり。

今度は東京が『遥か昔』になった。

これは意外であった。

ああ。ニッポンよ。遠くに行かないでくれー。

 

翌日。出勤すると。

皆に。Heeeeey! Welcome back!と言われ。

なんだか小っ恥ずかしく、

年甲斐もなくテレていたのだが

ウム。ここにも自分の生活があるようだ。

 

そして。家に帰って洗濯。

あれ?! 洗濯機から水が出ない

ホースを外し、蛇口を直接ひねっても水が出ない。

もー。いやだっ。

蛇口。壊れたか、凍結か

ああ。また。基本的生活トラブルかよーっ。

ああ。ドイツ語で電話か

もー。ホントいやだっ!

 

修行生活、再び。

はじまり。はじまり。

 

p.s. 結局。蛇口は、凍結であった。twitterで解決策を提供され、一件落着。

 

Photo: こんな世界に戻って参りました。

この世界から東京に来たら、そりゃ、ショーシャンクの主人公のようになるわいっ。