ドイツで鍛える生活 18巻

ここまでのいきさつを読んでいない方は前書きから順にどうぞ。

 

1.さようならドイチランド

**** さようならドイチランド ****

 

さて。いよいよ。ドイツ撤退の日。

行方不明になっていた、

ドイツの口座から日本の口座へ移動した全財産は。

(参照: 17巻 2. ドイツ撤退への道 #3)

ちゃんと日本の口座に反映されていた。

ふう。送金に4日間ですかあ

何でも時間かかるなあ。ほんと。

 

さて。例の暖房代問題。

(参照;17巻 1.ドイツ撤退への道 #2)

光熱費の検針が1年に一度なので。

次の暖房代の精算が8ヶ月後。

というわけで、銀行口座を開きっぱなしにして、

引き落とされる予想額を

残しておかなければならないというやつ。

ウーム

 

ドイツの光熱費は家賃に上乗せされているのだが。

それは単なる前年度を元に計算された予想額にすぎない。

まあ。言ってみれば。日本でいう税金の年度末調整、

みたいなシステムと同じである。

 

同僚のルーマニア人は。

夫婦ですんごい暖房使ったから。

超過料金は400ユーロだった。と言った。

別の人はあんまり使わなかったから100ユーロ返ってきた。と。

家の管理会社に予想額を聞いてみたが。

返事がなかった

 

ふむ。やっぱりねえ。

そう簡単にこっちの人は仕事してくれないよねえ。

と思っていたが。

ふと。退職した会社のメールボックスを見てみた。

あれ?! まだ会社のメールが見れる。

 

あーーっ!返事来ている。

もうこっちにメールするな。って言ったのにーっ!

もー。ドイツって、

物事がほんと伝わらないのよねー。

初歩的、事務的処理ができないというか、

なんというか。なんで?

 

で。そのメールを開けてみると

 

                          * * * * * * * * * 

あなたは沢山、暖房を使ったようです。

私の計算によると。1200ユーロです。

敷金を差し引いても超過料金445ユーロです。

よって、敷金は返せません。

445ユーロを今、払ってくれれば、

それで精算を終えてもよいです。

                         * * * * * * ** * * *

 

暖房代の超過料金が12万円超え?え。1年で?

そして、添付されている計算書を見る

なんかわけがわからん

というか。

もう数時間後にはドイツを撤退するので見ていられん。

しかーし。日本に行ってしまったら。

もうオンラインバンキングもできない(注)

慌てて、指定された額をオンラインで支払う。

ウーム

(注: ドイツの私の銀行では、オンラインバンキング時に使用する暗証番号はその都度、携帯にSMSで送られてくる。よって、ドイツの携帯を持っていて、SMSが送られる圏内のヨーロッパにいないとオンラインで振込みなどできないシステム)

 

ハイ。次。

まだいろいろな書類が来るであろうから、

ポストにメモを貼る。

『マユゲ宛のものもxxさんのところに入れてください』

と、書いたつもりだったのだが

最後に動詞を書くの忘れた

まあ。意味はわかるだろう。

撤退準備完了。

 

そして。

鍵を次の住人に全て渡し、ドアを閉めた。

さようなら、私の家。

空港行きの長距離バスに乗った。

さようなら、リューベック。

飛行機がとんだ。

さようなら、ドイチランド。

 

ウーム。

もっと住んだら、きっと。

もっといいところが沢山、見えたのだろう。

10年ドイツに住んだ人は。

この『ドイツで鍛える生活』を読んで。

違うっ。って思うこともあるだろう。

私の見聞記は、ただの偏見記だったかもしれない。

 

     * * * * *

子供のころから。

バカの一つ覚えとして。

憧れ続けた、外国。

憧れ続けた、欧米。

憧れ続けた、外国で自立する生活。

 

日本じゃない国で。

そこの土地の人々と同じように働き。

同じように給料をもらって。

その土地の平均的な生活をしてみたかった。

 

日本人のいないところで。

サラリーマンになった。

憧れは。たぶん、現実になった。

(↑ちょっとバカっぽい憧れだけど笑)

 

ただ。隣の芝生は青く見えたけれど、

自分の芝生だって本当は青かった。

ということだ。

 

経験とは。おそらく。

自分の今までの価値観を崩すためにある。

『思ったのとちがった』

というのは、一歩、進んだ。ということだ。

そういうことだ強引にもっていきます)

 

   * * * そして。撤退2ヶ月後  * * * 

 

実家の側の多摩川の川べりを歩くと。

毎日歩いたリューベックの川のあぜ道が。

フラッシュバックする。

本当に遠くまで来てしまった。と。

思いながらトボトボ歩いたあのあぜ道。

 

あの光景はつい最近の日常だったのだが。

長い夢だったような不思議な感覚。

いつも多摩川を歩く度、あの世界に引き戻されるが。

多摩川。という引き金がなければ、

本当に記憶から埋葬されてしまいそうな

そんな、あやふやな記憶の中だけの世界。

あの世界は一体、何だったのだろう?

 

あ。そういえば。と思って。

ドイツの口座の出入りをオンラインで見る。

 

あれ~っ!?

いまだに引き落とされていいる~。

毎月35ユーロ(4000円)、ドイツのインターネット代。

手違いだー。

なぜにこんなにも事務処理ができないのか~っ!

ドイツ~っ!もー。いやだー。

 

ン!? 実は

あの暖房代も向こうの間違いではないか?

撤退のどさくさに紛れ、敷金が当てられたりして。

わけがわからなくなったが。

向こうの人。事務処理できないから計算間違いではないのか。

それか、撤退するから騙されたのか。

 

やられた。やられたー。

 

あー。ドイツで鍛える生活。

修行は全然足りてなかった

ま。そんな事を東京の青空の下で嘆いても。

仕方がない。次へ進もう。次へ。

過去に戻るのは簡単だ。前へ。前へ。

 

いや。前を見すぎてもいけない。

今。だけを。

過去も未来も今についてくる。

 

 

おわり

 

p.s.この後、東京に戻って数ヶ月。マユゲは凄まじく迷走します。そして、『小説より奇なり』な結末へと…。それはまた「迷走記」にて笑。

次回は(2012/11/01頃)『あとがき』にて『鍛える生活の』分析と総評を。