ドイツで鍛える生活 16巻

ここまでのいきさつを読んでいない方は前書きから順にどうぞ。

 

1. 勤務最終日

ドイツで会社を辞めるの時は、

日本と同様、こっそり辞めるものらしい。

ということがわかり、

(参照: 14巻:2.いよいよ残り1週間

残り日数がわずかとなってからも。

淡々と日々の勤務をこなしつつ、

少しずつ、自分のオフィスを片付けたり、

コンピュータのデータを消したりして。

沈黙を守っていた。

 

そして。最終日。

さすがにやることもなく手持ち無沙汰。

ボスから皆に。

一斉メールが出る事になっていたのだが。

一向に出る気配がない

やっぱり。

外国ではいちいち催促しないといけないのかなあ。

と思っていたところ。出た。

『マユゲが日本に戻る決断をしました。彼女の貢献に感謝し云々~。

thank you

 

すると。

同僚たちがポツリポツリと私のオフィスにやってきて。

えーっ。知らなかったよー。なんでー。

と口々に言うので、

 

ウーン。いい街だけどね、

やっぱりここは小さい街だし、

家族主体だから。

独り者が住むには難しいところだよね。とか。

当たり障りのない返事をしていたのだが。

一番仲の良かったルーマニア人の子は悲しそうな顔をして。

「じゃあ.....君はロンリーだったんだ」と言った後、

うつむいてしまった

 

えーっ。ロンリー。って

そうか、私はロンリーだったのか。

ウーム。ロンリー

ロンリーって改めて言われると。

元もこうもないし。

なんだかものすごーく小恥ずかしい。

ロンリーねぇ

 

そして。

人が集まればいつものごとく。

『テーブルサッカーしよっ!』となるので、

よーし、最後の試合だー。と

テーブルサッカーをはじめようとしたその時。

1人のルーマニア人が。

「君はボクが初めて会った日本人なんだ」と。

ボソっと言った。

すると横にいたインド人も。

「ボクもだよ」と

 

いや。まあ。

おそらく、そうであろうとは思っていたが。

改めて言われるとなんかずしっと重い。

私は過去にも。

インド人もルーマニア人も身近にいたし。

話したこともある。

しかし彼らにとっては。

私が初めての日本人であり、

おそらく。最後の可能性も高い。

 

つまり。私の一挙一動が。

彼らにとっては。

私の行動でなく、日本人の行動なわけです。

 

出社時間は遅く、

椅子の上であぐらをかいて仕事をし、

そのまま隣の部屋くらいなら、靴を履かないで行く。

こっちでは非を認めないのが常識なのに。

あっけなく。

『あ。ごめーん。それ、私のミスだ』とか平気で言う。

チームランチで作るごはんは。

なんか得体の知れぬもの(やきそば)が出て来たりする。

(参照: 15巻:2. 最後のチームランチ

 

というわけで。日本人は。

朝が遅く、靴を履かないで、すぐ謝るんだよー。

で、ごはんもなんか変なの作るの。

って伝わるわけですね。

もー。日本の皆様、申し訳ない!

 

その後。入れ替わり立ち代わり、

色んな人とテーブルサッカーをした後。

色んな人のところに立寄り、最後の挨拶まわり。

このへんも日本と同じである。

違うのはハグしたりすること。

しかし。これ。外人だから違和感ないけど。

日本で席が隣のおっさんとハグして別れるとか。

あり得ません。

 

で。最後の決まり文句は。

キープ イン タッチねー。

みたいなことをあちらこちらで言い合うわけです。

これも、まあ。親しい度によって。

単なる挨拶だったり、義理だったり。

本気だったりするわけです。

この辺りも日本と同じ。

 

そして。外国では。こういう時。

Facebookのアカウントを交換するのが通例なのだが

うかつにもボスとも交換してしまい。

ブログのリンクを貼ってあったため、

この『ドイツで鍛える生活』(注1)もバレてしまった。

(注1:これは過去にリアルタイムでブログで日記として連載していた)

 

「あ。でも。日本語だから読めないよ」と私が言うと。

「グーグル翻訳で読むから大丈夫」とボス。

……

けっこう職場の事書いているしなあ。。。まずいなあ。

でも。所詮、機械の翻訳だしいっか。

「ほーら、こうすれば、君がブログをアップしたとき、

自動でメールで知らせが来るし』

と。ボスはRSS登録なんかもしてみせた。

…… (なんかいやな予感

 

そして。

会社のIDカードと鍵を返し、

オフィスを去った。

 

家へ向かってテクテクと歩くと。

風がきもちいい。空もきもちいい。

そう。自由だ。自由なのだー!

仕事という足かせが取れたと同時に無職になっちゃったけど。

もー。異様なる解放感!

 

もう東京にだって帰れちゃうぞー。

帰ったら『ちょっとお茶しない?』とかできるのである。

微妙なニュアンスの会話だって楽しめる。

車がなくても行きたいところに行ける。

気軽に地下鉄や電車にヒョイっと乗り。

帰りたい時はいつだって電車に飛び乗ればよい。

自力で気軽に移動できるのだ。

寒くないからオートバイだって買えちゃうぞー。

 

遂に。金曜日の夜から月曜日の朝まで。

一言も喋らない無言行の生活とも、

お別れなのであるが

(つまり会社以外で喋り相手がいないわけ。ま。努力しなかった私の責任も大きい)

 

しかし。実は。これ。

裏をかえせば『超自由』ということでもあった。

究極の自由は常に孤独とセットである。

『孤独でなくなる』とは。

『自由でなくなる』ということだ。

私は。孤独を捨てるのと引き換えに、

自由も捨てる

 

バイバイ、ロンリネス。

バイバイ、フリーダム。

 

      * * * 

ともかく。

実は。自由を捨てているのだが。

なんだかわからぬ解放感にひたりつつ、テクテクと歩き家に到着。

ボスの言ってたグーグル翻訳で自分のブログを英語に訳してみる。

ガーン!わかる

けっこう何書いているかわかる

慌ててグーグル翻訳をかく乱させる書き方を研究すること数時間。

まずい部分を書き直すこと数時間。

解放感もすっとんだ。

 

あー。くだらない。

もー。何やってるんだろ。

 

2. ドイツ撤退への道 #1

会社も終わった。

あとはドイツ撤退に向けて。

まっしぐらなのであるが

近々、大家が家を見にくるというのに。

洗面所の電気の接続ケーブルがどっかで外れてて。

電気がつかない。もー。

 

さてと。

手続き関連が色々山積み。

インターネットの解約やら電気、水道、暖房代の精算。

ドイツ版NHKみたいな公共放送の解約(GEZ)

銀行と口座の閉鎖についての打ち合わせ。

引越し荷物の手配など。

 

ウーム

これまた全部ドイツ語で切り抜けるわけで。

もう頭が痛い

当然。引越し荷物のパッキングもある。

 

ドイツの解約は何でも(ネットやら携帯やら、家など)。

基本。月末から数えて3ヶ月前に言わないといけない。

(つまり、実質。3ヶ月半くらい前に言う)

しかし。家は自分で後釜を見つければこの制度は免除される。

で。今回、運よく次に住む人を見つけたので。

(参照: 13巻:2. 辞表提出

色々と助かったのであるが、問題なのは銀行口座。

もちろん。撤退前夜まで家は使うわけで。

電気、水道、暖房やら、電話なんかも使う。

となると。それらの精算と引き落としは。

自分が撤退した後に行われるわけだが。

その時には自分はもうドイツにいないし。

銀行口座も閉めて金も持ち出してしまうわけで。

一体どうしたものか

 

で。昔。ドイツにいた時は。

暖房なしのアパート 低賃金のブルーワーク で。

寒さやら、なんやらで精神共々イカれ。

わたしゃ、もう一生。ドイツなんか来ないぞー。

ブラックリストにでもなんでも載せてくれやー。

エイッ!と。銀行口座だけ閉め。

後は知らないもんねー。ってズラかったら。

引き落とせなかった携帯なんかの請求が日本まで到達し。

最後には赤紙のようなすんごい警告とかが来たりして。

きゃー。ナチ。とかビビリまくり。

結局。延滞金を含め、高い海外送金をして払うハメになったので。

今度はちゃんとしたいのである。

まあ。無謀な事をするにはもういい年だしね。

 

というわけで。やるぞー。手続き。開始!

 

まず。役所に行き、ドイツの住民票を抜く。

ハハー。もう住民じゃないぞー。

もう給料の40%の税金を払わなくてよいんだ。

いや。まあ。給料もなくなるんですけどね。

 

次。インターネット。

これは家の後釜の人が使うというので。

一緒にショップに出向く。

名義変更完了!ウーン。順調だ!

2年契約のモバイルネットも同じ会社なので。

そこで一緒に解約しようとすると。

ショップのお兄ちゃんは。

ここでは出来ないから

本社のカスタマーサービスに『辞めます』

という旨の手紙を書いて遅れと言う。

「えー。解約する用紙とかないわけ?」

「ない」

えー。フリースタイルの手紙ですかー。なにそれ。

 

次。TV、ラジオの公共放送の解約。

とある銀行に用紙があるとの噂を聞いたので銀行に出向く。

が。用紙がなかった

家に帰り、ネットで。

ドイツ語版の『なんでも相談室QA』みたいのをみると。

やっぱりその銀行にあるらしい。

もう一度、銀行に出向く。

今度は銀行のお兄ちゃんに

『用紙がほしい』と言ったら出て来た。

あー。もう。何でさっき聞かなかったのか

よーし。一個一個解決しているぞー。

 

そう。今まで。

『鍛える生活』で奮闘してきただけあり。

ドイツ語も手続き関連は意外と問題ないのである。

しかーし。

トラブル解決用語ばかり使っているので。

『これ。解約したのだが、解約されていないんだけど』とか。

『トイレの配管から水が漏れているんだけど』とかは。

スラスラ~っと言えるのであるが。

実は。お恥ずかしながら。

『今夜、遊びに行かない?』みたいな文句は。

サラッと言えないわけです。

あー。哀しいですねえ。

どんな生活をしてきたのか、この語彙が物語っています。

 

さて。例のフリースタイルお手紙というのを。

書いておくってみた。

 

これに対するお返事を郵送で貰えば。

無事。解約らしい。というか

お返事。私がドイツにいる間に間に合うのだろうか

 

しかし。このフリースタイルお手紙。

携帯の解約などでは一般的らしいのだが。

なぜ故に決まった用紙を作らないのか。

必要なデータを書き忘れる人がいたりで、

となると。

手紙が行ったり来たりしてかなり効率悪いと思うのだが

ゲルマン=効率。

という世間一般のイメージとかなり違うんですけど。

(実は解約に時間を取らせ、1ヶ月でも2ヶ月でも多く金を取る悪徳商法のような気もするが、まあ。なんも信じられないビョーキなもんで笑)

 

が。この解約の件。

このあと。意外な展開を見せたのであった~。

 

引越し手続きはまだまだ続く